『エリザベート』~報われない「フランツ役」考~

エリザベート』の主要キャスト、「フランツ」。

「宝塚」では、2番手格の方が演じる事が多く、配役表でも「ルキーニ」より上。

なのに、「ルキーニ役」の方が、将来トップスターになる確率が高く、脚光を浴びます。

実際、歴代フランツ・ヨーゼフ役は、以下のとおり。

 ①高嶺ふぶき(1996年雪組

 ②稔幸(1996年星組

 ③和央ようか(1998年宙組

 ④樹里咲穂(2002年花組:専科出演)※

 (トート:春野寿美礼エリザベート大鳥れい、ルキーニ:瀬奈じゅん

 ⑤初風緑(2005年月組:専科出演)※

 (トート:彩輝直エリザベート瀬奈じゅん、ルキーニ:霧矢大夢

 ⑥彩吹真央(2007年雪組)※

 ⑦霧矢大夢(2009年月組

 ⑧北翔海莉(2014年花組

 ⑨真風涼帆(2016年宙組

 ⑩美弥るりか(2018年月組

 (Wikipedia参照、敬省略)

 ※はトップスターに就任されていないスターさんです。

100%のトップ就任率を誇る「ルキーニ役」に比べると、就任率が低い。。

就任されていない3人の内、2人が専科からの出演というのも興味深い。。

「フランツ役」を「専科」から呼び寄せてまで、2番手格のスターを「ルキーニ」に配役し、2番手役は表向き「フランツ」の謎。

「ウィーン版エリザベートの来日公演」、「ウィーン版CD」のキャストでは、「フランツ役」は「ルキーニ役」より配役順が下です。

東宝版」は、表向きは「フランツ役」が上の方に載っていますが、キャストの配役では、「ルキーニ役」の方が「注目度」高そう。

 

スターシステムを取っているのは「宝塚」だけです。

よって、「主役」以外は、「宝塚以外の舞台」では、主要キャストに番手はなく、曖昧です。

(役の大きさは、作品によってあるものの、番手が固定されていないという意味です)

でも、番手が存在する「宝塚」。

目立つなら、「ルキーニ」を2番手格が演じてもいいんじゃない?

と思いました。

でも、2番手格はやはり「フランツ」が合うと思います。

 

「宝塚」とそれ以外の舞台の違いは、「主役」。

「トート」が主役である「宝塚」。

「それ以外の舞台」の主役は「エリザベート」。

「宝塚」で上演するにあたり、「トート」を主役にし、「トートとエリザベートの愛の物語」を強調するよう脚色されました。

その結果、「フランツ役」は「宝塚」において、2番手格になったのかな!?

理由としては、

・「フランツ」はノーブルな皇子様(正統派貴公子)
・「トートとエリザベートの愛の物語」に重きを置くと、「死への誘惑」を拒否する「エリザベート」に「生への誘惑」として存在する「フランツ」

 

「トートからの愛」VS「フランツからの愛」を「生と死」の対比と表し、「フランツ」は「トート」のライバルという、宝塚的「三角関係」に脚色された・・・?

 

エリザベート」が主役の場合、エリザベートは常に「死」を意識して苦悩し、「トート」が誘惑している感じです。

「フランツ」は申し訳ないですが、もはやアウトオブ眼中。

恋い慕いつつも、エリザベートからの愛を受け取ることを、ほぼ諦め、切なく見守る報われないお方。

 

「宝塚版」では、「フランツ」のキャラ設定は変わらないけど、「トート」のライバルとして、脚光を浴びます。

「死への誘惑」物語が、「宝塚版」では、「愛の物語」として、「トート」と「フランツ」の対称的な愛を示すことで、「生への誘惑」の要素が加わってるように見えます。

そのはずが、主役が「トート」に変わっても、「エリザベート」の「死(トート)への誘惑」に苦悩するスタンスは変わらない。

というより、「フランツ」の控えめな「見守り愛」姿勢によって、対比というほどには、強く見えにくいです。

2番手格に存在を大きくしても、地味に見えてしまうという、設定上、どうしても目立ちにくい残念な役柄。

 

あくまでも、現時点での個人的解釈です。

解釈は十人十色で、それが、この作品の魅力なので、ご了承ください。

 

「フランツ役は難しい」と言うことを、耳にしたことがあります。

2005年版月組公演、無理矢理感のある配役が話題になりました。

失礼ながら、不安要素の多い、「トート」と「エリザベート」を支えるべく、

実力派「初風さん」を「フランツ役」に配役して、脇をしっかり固めたという話。

勿論、「ルキーニ役」も大変だし、そもそも「トート」「エリザベート」も超難しい。

ただ、「フランツ」は華やかさがなく、目立ちにくいものの、地味に難しい役です。

 

「自由がない」と言いつつも、割と主張もはっきりしている「エリザベート」。

不老不死(死ですが。。)の割に、結構、我が儘で、独占欲も主張も強い「トート」。

強い母(ゾフィー)。

国家を揺るがすほど、度が過ぎる反抗期の長い息子(ルドルフ)。

それに比べて、忍耐強く、「妻の愛」を密かに求め、そっと見守る「フランツ」。

 

「宝塚」のスターは、「華」があって「押し出し」の強さが求められます。

それらを、そぎ落として、静かに佇むことで、魅力を伝えなければなりません。

内面の苦悩を、佇まいから、醸し出す・・・

「若さ」や「情熱」が使えない、「役者力」が求められそう。

イマイチな人が演じた場合、「宝塚版」で脚色された「愛の物語」が成立せず、「トートでええやん」で終わると、作品が薄っぺらくなりそう。

「フランツ」が「いい人」なほど、「エリザベート」の苦悩がもどかしく感じたりして、切ない感じが、作品に深みが出る感じがします。

 

しつこいですが個人的な感想(考察?)です。

「フランツ」は、「いい人」だし、上手い人が演じるほど、作品は盛り上がるのに、「いい人止まり」。

どんなに、素晴らしくても、「トート」と「エリザベート」の評価に注目がいきます。

次に注目されるのは、「押し出し」が強く、「個性的」で出番の多い、「ルキーニ」。

真面目にコツコツと任務をこなした結果、ハプスブルク帝国の衰退を見守る羽目になり、報われない皇帝フランツ・ヨーゼフ。

舞台上でも、

貢献度の割に目立たない・・・

2番手格の役なのに目立たない・・・

と、「報われない役」と思ってしまいます。

せめて、「フランツ」の新曲ができたらいいのにな。

 

さいたまんぬ

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